論文のコメント

中島先生長尾くんにならって、論文の背景についてコメントを書いてみようかと思いました。思い返すに、大抵の論文は偶然に共同研究者に巡り合ったり、誰かに何かを指摘されたことからはじまっています。一期一会です。

[1203.2930] Nilpotent orbits and codimension-two defects of 6d N=(2,0) theories
with Oscar Chacaltana and Jacques Distler.

Jacques に「Strings-Math 2011」に会った際に、当時彼の学生さんだった Oscar と彼との論文の内容を説明してもらったが、そこではまだ A 型 D 型の六次元理論しかなされていなかったこと、また、D 型の場合に pole coefficient に拘束が出てくる際の扱いが如何にも場当たり的だったことから、一般的な理解はどうすればいいかを調べはじめたもの。冪零軌道が重要であろうというのは明らかだったから、Collingwood-McGovern の教科書を借りてきて、勉強しながら考えていたが、結局、実冪零軌道の章を除いて教科書を全部読むはめになった。歴史の長い冪零軌道の分野においても、比較的最近みつかった概念も使わねばならないことが判り、こういうのがすっと出てくるのだから矢張り六次元 N=(2,0) 理論は偉いと思った。寺嶋さんとやった結果もきちんと再現できた。

[1111.5624] The ABCDEFG of Instantons and W-algebras
with Christoph Keller, Noppadol Mekareeya and Jaewon Song.

8月末に Noppadol と Jaewon が丁度同じ週に IPMU に来てくれた。僕も含め N=2 ゲージ理論が好きなので、自然にその話になるが、Noppadol が計算していた Higgs branch の Hilbert 級数が例外型のインスタントン計算に使えることが判ったので、Jaewon の前からの共同研究者の Christoph と力をあわせたというもの。まあ頑張れば合うに違いないという計算ではあったが、E6型の W 代数を決定するのは骨が折れた。安直に自由 boson 6つで展開するコードを書くと居室の iMac ではメモリ不足になるので、結局 W(A2)×W(A2)× free boson 二つで展開することに。ここだけでコードの改良に一週間、実際の計算は一晩かかった。W代数計算のパッケージで有名な Kris Thielemans 先生は今インペリアル大の医学部で体のイメージングのコンピュータ処理等をなさっていることが判った。v1 では W(E6) の生成子を論文に載せるのは真面目な Christoph に止められたが、 v2 では許してもらった。あまりに小さい文字で大量に載せた為、JHEP で出版された際に、組版担当の人を泣かせてしまったようで申し訳なかった。

[1110.2657] On 6d N=(2,0) theory compactified on a Riemann surface with finite area
with Davide Gaiotto and Gregory W. Moore.

下に Greg に指摘されて正則シンプレクティックに変えたと書いたが、それは、ハイパーケーラー多様体としては Higgs branch の計量が内部空間の面積に依存するからだった。その依存の詳細を調べたもの。Davide が計量の面積依存性を twistor 構成を使ってすぐ書き下してくれたのだが、理解するのに随分時間がかかった。副産物として、六次元 N=(2,0) 理論の長い管状領域から出てくるゲージ群が時々小さくなる現象の物理的背景が分かった。この論文を仕上げる前までは、相変わらず Gaiotto 曲面をあまり物理的なものとして考えていなかったが、ようやく認識を改めて、Gaiotto 曲面は物理的なものであると思えるようになった。

[1110.0531] On S-duality of 5d super Yang-Mills on S1

下に前に切りだした論文について書いたが、六次元の SU(奇数) 型 N=(2,0) 理論の Z2 自己同形について判ったことを判ったところまでまとめておこうと思った。IPMU にはオリエンティフォールドの専門家の堀さんと杉本さんが居るので散々質問を聞いてもらって有り難かった。2009年の年末に気付いた問題点をずっと調べて二年弱掛かったが、それでも結局六次元の立場からは分からず。そのかわり、五次元のゲージ理論の立場からはきちんと調べて、六次元の立場からはどういう結果が求まるべきか、は論文内にまとまっている筈。

[1108.5632] A strange relationship between 2d CFT and 4d gauge theory

これは駒場で河東先生主催で毎年やっている「数理物理」という夏の学校の講義録。10年ほど前には学生として参加した夏の学校なので、講師として読んでいただけて光栄だった。一頁目以外は日本語で、一応修士の院生向けに書いたので、僕の最近の仕事に興味のあるかたは読んで下さい。arXiv に日本語で投稿するにはどうするか、というのがなかなか大変だった。

[1108.2315] Seiberg-Witten Geometries Revisited
with Seiji Terashima.

大地震があって、原発が爆発して、計画停電もはじまったので、女々しい僕は、研究所で義務がないことを良いことに、急遽京都の基研に出張という名目で疎開していたのだけれども、出張したからには何か共同研究をはじめねばならぬ。というわけで、寺嶋さんと梁さんの結果を Gaiotto 風に Hitchin 系をつかってみたら理解が深まるだろうかという以前から気になっていた問題に寺嶋さんとあたってみることにした。結論としては、物質場を充分入れて超共形になる場合はきちんと Hitchin 系で書きなおせるが、物質場を一種類 R 入れる毎に XR を掛け合わせるだけで良いという構造は Hitchin 系からはわからない。それは SU(N) で基本表現を Nf 個入れたごく普通の場合だってそうだ。N=2 ゲージ理論の全ての性質が Gaiotto 式にすることで最もよくわかるわけではない。しかし、Gaiotto 式にみてみることで沢山新たな知見が得られるのも事実だ。

[1106.5698] On 2d TQFTs whose values are holomorphic symplectic varieties
with Gregory W. Moore.

「String-Math 2011」という研究会で話をすることになったので、ガイオット型理論の Higgs branch が TQFT の変種になるという話をしようと思って、原稿をでっち上げたのだが、偶然研究会の少し前に Greg に会ったので見せたところ全くこんなのでは数学者には通じない、と言われて彼の手を借りて大幅に書き直したもの。ハイパーケーラーでなくて正則シンプレクティックにしたことで話がより簡単になった。

[1106.1172] Para-Liouville/Toda central charges from M5-branes
with Tatsuma Nishioka.

5/30 の月曜が Memorial Day で研究所の食堂が閉まっていたので、街まで行って西岡君と昼食にしたのだが、そこで西岡君が入江君から昔 para-Liouville 理論というのがあると聞いたことがあると教えてくれた。整数パラメタを一個いれるのならどうせ $\mathbb{C}^2/\mathbb{Z}_m$ を考えるんだろうと言っていたら、その晩に丁度 Belavin-Feigin が出てどうもそうらしいということなので、前の論文の手法をつかって central charge だけ調べて論文にした。

[1105.4390] 3d Partition Function as Overlap of Wavefunctions
with Tatsuma Nishioka, Masahito Yamazaki.

4月に IAS に戻って、折角日本人で弦理論やってるのが三人いるんだから何かやろうということで、Stony Brook 組に倣っていろいろやってようやく T[SU(N)] 理論の分配関数が計算できたと思っていたら、非常に被った Benvenuti-Pasquetti という論文が出たので慌ててこちらも論文にまとめた。丁度僕はパリとブリュッセルに出張だったのだが、これを慌てて書いていたせいで週末も全く観光に行く暇が無かった。図が西岡君の趣味で xfig から ps_t という形式のファイルになっていて面白い。

[1105.3215] N=1 curves for trifundamentals
with Kazuya Yonekura.

これはそもそも2010年の春に Perimeter Institute に行ったときに、その頃 PI にいらした奥田さんと大河内さんに出して貰った問題。しばらく考えても混乱するばかりだからとほうってあったのを、日本に11月に戻ったので米倉君に振って僕は忘れていたら、数ヶ月たって彼が一番基礎的な trifundamental + SU(2)3 の場合を解いてくれたので、あとはガイオット式に一般化したというもの。新しい Seiberg-Witten カーブを特定したのは初めてだったのでなかなか面白かった。必要なモノドロミーを持ったカーブの族の書きかたに関しては Bondal 先生にもいろいろ教えてもらった。

[1105.0357] Instanton counting with a surface operator and the chain-saw quiver
with Hiroaki Kanno.

一般の表面演算子の件で、分配関数を直接計算して確認できないかと思って中島先生やら長尾くんにいろいろ質問していると、実はインスタントンモジュライが既に chain-saw quiver と言って "Drinfeld Zastava の量子化" という論文に書き下されているのを教えてもらった。そこで手を動かしはじめたところ、丁度名古屋大にマチウ群の研究会にいく機会があり、夜のお酒の席で菅野先生に最近どんなことをなさっているか聞くと丁度同じことをなさっているということで、一緒にやることにした。量子DS還元自体をプログラムに組めなかったので、完全に一般のケースを確認できたわけではないのが心残り。一般の場合にプログラム書いてくれる人がいたら連絡下さい。菅野先生の趣味で図が pstricks で直接 tex に描かれていてそれも勉強になった。

[1102.0076] On W-algebras and the symmetries of defects of 6d N=(2,0) theory

2010年暮れに Wyllard が一般の表面演算子つきでインスタントン分配関数を考えると量子 Drinfeld-Sokolov で出る W 代数が出るだろうという論文書いたので、どうしたものかと思っていたが、丁度 Ruben Minasian が IPMU に滞在していて 6d N=(2,0) 理論のアノマリに関していろいろ議論したので、それを使ってみることを考えた。ゲージ理論の表面演算子は 6 次元の余次元 2 の欠陥から来ているので、一般 W 代数に含まれるカレント代数の中心電荷が欠陥のアノマリから出るはずで、欠陥のアノマリ自体は重力解から決定できた。ややこしい計算自体は90年代初頭の de Boer-Tjin と 2009 年の Gaiotto-Maldacena に全部やってあったので、単に解読して比較するだけだった。v1 では Sec. 2 にかいたレビューが間違っていて、Davide に叱られた。

[1011.4568] Comments on scaling limits of 4d N=2 theories
with Davide Gaiotto, Nathan Seiberg.

9月頃に a 定理が a 最大化が使える場合、及び重力解に高次項をいれた場合に成り立つというセミナーがそれぞれあり、それを聞いた Nati が「やっぱりお前が Al と書いた論文は間違っているんじゃないか」と言いはじめた。僕は丁度日本に帰国するための準備で忙しかったのでしばらく関与せずにいたら、Davide と Nati で江口=堀=伊藤=梁の低エネルギー極限の取り方が良くなかったという結論に至ったらしく、説明を受けた。僕としては前に書いた論文が間違っているのは承服し難く、いろいろ抵抗してみたが、別の確認をしてみるとやはり Davide と Nati の解析を指示する結果が出てどうしようも無くなった。日本に帰る直前に Davide が黒板でおおよそ説明してくれた粗筋を日本に戻ってから詳細を足して書き上げたのがこの論文。

[1009.0339] N=2 S-duality via Outer-automorphism Twists

2009年のケンタッキー大での "Quantum Theory and Symmetry" 会議中に、Philip と Al にこんなことを考えたらどうなるか、と聞かれたのを敷衍したもの。'09年暮れに論文に書こうとしたら、N=4 超対称の場合のレビューを書いていてわからない点があったのでそちらを長い間考えていたものの、$A_{even}$ の場合は非常に難しいということが判明して、わかっているところだけ切り出して論文にした。

[1009.0017] N = 1 SCFTs from Brane Monodromy
with Jonathan J. Heckman, Cumrun Vafa, Brian Wecht.

Brian と N=2 SCFT を変形するという論文を書いたので、Jonathan がそれを F 理論現象論に使いたいと言って何度も僕の部屋に質問にきていたのだけれど、単に助言をしているだけのつもりがいつのまにか共同研究になっていたというもの。ハイパー多重項に off-diagonal な質量項をいれるといろいろ変なことが起こる。仕組みはとても簡単だが、案外誰も考えたことがなかったらしい。論文を書くのを Jonathan に任せているとどんどん例が増えて長くなるので Brian と二人でこちらはどんどん例を削除した。

[1007.0992] Mirrors of 3d Sicilian theories
with Francesco Benini, Dan Xie.

'09年暮れに Texas A&M に行った際に Dan と会ったら、こんな数学の論文があるが四次元の N=2 理論で解釈できないだろうか、と言うので見てみると、むしろ三次元の理論でミラーを取っているのだということがわかった。プリンストンに戻って Francesco も加えてのんびりやって、出来上がったら夏になっていた。僕は SU だけの短めの論文にして、 SO の話は入れたくなかったからかなり頑強に抵抗したのだが、二人が折角やったのだから載せればいいじゃないかというので結局折れて長さが 4 割増になった。この論文を書くために Gaiotto-Witten の長い論文を 二つひたすら読んだ。新しいことを見つけたと思ってから彼らの論文を読み直すと大抵どこかに載っているのだった。あれを最後まで読んだのは僕らぐらいではないかと思う。

[1005.4469] Affine SL(2) conformal blocks from 4d gauge theories
with L. Fernando Alday.

表面演算子つきのインスタントンのモジュライはどうやったらしらべられるか中島先生に聞いたら、FFNRに載っているという答えだったので解読して物理の言葉に翻訳しただけ。はじめは Ribault-Teschner 対応のどちら側に答えが一致するのかわからず困ったが、ヴィラソロ代数で解釈するのを放棄すると混乱が収まった。二月に日本に滞在中に始めて、プリンストンに戻ってからは何度も二人で Okounkov 先生に教えを乞うていたら春になった。長年 Braverman がやった話を物理的に理解したいと思っていたのをようやく果たした。

[1005.3546] Exactly Marginal Deformations and Global Symmetries
with Daniel Green, Zohar Komargodski, Nathan Seiberg, Brian Wecht.

Brian と Francesco の '09 年夏の論文で N=1 SCFT の marginal 変形を調べた際に微妙な点があったので長い脚注を書いたのだが、その脚注を読んだ Dan が興味をもって一緒に調べることになった。なんども廊下や食堂で議論をしていると Zohar と Nati も参加することになってかなり船頭が多くなったが、お蔭で主張が鋭くなり、Leigh-Strassler の論文の本質を取り出せたと思う。最初の三人は LaTeX 派なので原稿はそれで書いていたのだが、Nati は harvmac 派なので原稿を書き直す必要に迫られ、手作業でするのはばからしいので八割方自動で LaTeX から harvmac に変換するスクリプトを書く羽目になった。

[1004.0956] Notes on the K3 Surface and the Mathieu group M24
with Tohru Eguchi, Hirosi Ooguri.

江口先生と向井先生は長い付き合いなので、K3 のシンプレクティック同形が M23 の特定の部分群であるという結果を向井先生が得たときからずっと stringy な K3 だと M24 全体が対称性になるんではないかと江口先生は思っていたそうだ。僕が院生のころからその話は何度も聞いていて、鈴木君ともちょっと手を動かしたりしていたのだが何もはっきりした結果は得られていなかった。'09年のアスペンで大栗先生と江口先生と一緒だった際にその話がまた持ち上がり、大栗先生の博士論文にのっている K3 の楕円種数の N=4 ヴィラソロでの既約分解の表式の話になった。当時僕は非常に楽観的だったのでここに M24 の構造がそのまま見えるのではないかと思って、数学辞典の付録の表を眺めてみると見事に一致していたので、慌てて両先生のところに伝えに行ったというもので、僕の寄与はそれだけ。何かもうちょっと理解してから論文にしようとしたが何もわからないので、'10年のテキサスでの会議で三人また集まった際に短いノートにして出そうと中華屋で食事中に決めた。何も論証がないので、"Experimental Mathematics" 誌に出したら、途中で雑誌が別の出版社に買われて、論文が組版された際に手違いで著者が一人追加される等いろいろおかしなことになった。

[0911.4787] N=2 gauge theories and degenerate fields of Toda theory
with Shoichi Kanno, Yutaka Matsuo, Shotaro Shiba.

10月に基研に滞在した際に、部屋を松尾先生とご一緒したので、なにか一緒にやりましょうということで、先生に W 代数に関して教えてもらうことにした。ゲージ理論側で必要なものに丁度対応する、半縮退表現というのがあるので、それをすこし調べたもの。寒くなってきた時期にボストンに出張してホテルの狭い机で原稿をタイプしていたのを覚えている。結果を重力解と安直に合わせようとするとうまく行かないので Maldacena 先生には答えを信用してもらえなかったが、Nadav et al. がさらに詳細をしらべた論文出していまのところゲージ理論と W 代数の比較は上手くいっているので、問題は重力解との合わせかたにあるのだと思われる。

[0909.4776] Liouville/Toda central charges from M5-branes
with L. Fernando Alday, Francesco Benini.

Bonelli-Tanzini に、戸田 CFT の central charge と 6d N=(2,0)理論のアノマリの表式が非常に似ている、という観察があると Fernando が言うので、丁度 Francesco と Brian と書いた論文で六次元のアノマリから四次元の central charge を出したところだったので同じ方法を使ってそれを導出したという話。同変コホモロジーの意味でアノマリを次元還元しないといけなかったので慌てて同変コホモロジーの基礎を勉強した。何か良い教科書はありますかと Witten 先生に聞いたら黒板で概説してくださった。

[0909.1327] Sicilian gauge theories and N=1 dualities
with Francesco Benini, Brian Wecht.

「27/32」を書いたときに M5 をリーマン面に巻いて N=1 超対称性を保った重力解が既に Maldacena-Nuñez が作っているのを知ったので、Francesco と N=1 対称性で何かやろうといっていたのと合わせていろいろやってみたもの。NSVZ の厳密β関数やら、Leigh-Strassler の議論やらをラグランジアンが無い状況でやらないといけないのでなかなか微妙だった。四次元理論の central charge が六次元のアノマリから自然に出るのがわかったのは良かった。このクラスの理論は「一般化箙(generalized quiver)理論」と呼ばれていたのだが、SU(N)3の表現で言ってみれば三つ脚のものが沢山あるのを指して一般化箙はないだろうと思って三人で頭を捻った。手裏剣理論は流石に駄目だろうというので、三つ脚の化け物が紋章のシチリアに敬意を表して「シチリア理論」という名前をつけたのだけれど、ほとんど誰も使ってくれずに悲しい。

[0909.0945] Loop and surface operators in N=2 gauge theory and Liouville modular geometry
with L. Fernando Alday, Davide Gaiotto, Sergei Gukov, Herman Verlinde.

Liouville 理論とゲージ理論が関係があるという話を聞いた Herman が、昔 Liouville 理論のループを調べたのがこの状況でどうなるか知りたいというので共同研究をはじめたところ、リーマン面上のループがゲージ理論のループであるという結果 (Drukker-Okuda-Morrison) が出、さらに表面演算子をいれると良いとなって Sergei の助力を頼んだらこうやって多人数になってしまった。ほぼ同じことをやっていたもう一団体と同じ日に論文を出した。僕は相変わらず二次元側の状況は良くわかっておらず、細かい計算をいろいろやっただけ。

[0906.3219] Liouville Correlation Functions from Four-dimensional Gauge Theories
with L. Fernando Alday, Davide Gaiotto.

Fernando は Wilson ループの計算が趣味なので、Davide の最近の結果を踏まえて N=2 超対称 SU(2) 理論で四つ flavor がある場合に計算をやってみようとしたところ、Pestun の公式を使う必要があり、Nekrasov の分配関数を使う必要があることがわかった。というわけで、昔僕が Nekrasov 分配関数をやっていたことを知っていた Davide が一緒にやらないかというので共同研究を始めた。はじめはどう計算したものかわからず数値計算などしていたが、ある休日僕があたりをサイクリングしていると、Davide から携帯にメールがあり、ゲージ理論の 1-loop 部分に出てくる特殊関数の組み合わせがが丁度 Liouville の DOZZ 因子と同じだと言う。当時僕は二次元の無理共形場理論なぞ全く知らなかったので、なんのことかさっぱり判らなかったが、じゃあ 1-loop でなくてインスタントン分配関数の部分は何なんだと聞くと、共形ブロックと一致するはずであるという Davide のお告げであるので、Mathematica で皆で机の前に座って計算してみると見事に一致したという話。Davide が '09 の弦理論会議で話したいというので慌てて論文にまとめた。

[0906.0965] 27/32
with Brian Wecht.

N=2 超共形場理論に m trΦ2 を足して N=1 超共形場理論に落とした場合に central charge がどうなるか?というのを調べていたら、おもいかけずいつも比が 27/32 になるということが示せた。ある日の昼食時に Juan に他の例で確かめてみたいが何か知らないか、と聞いてみると、 M5 をリーマン面に巻いた場合は N=2 の場合も N=1 の場合も重力解を昔 Nuñez と作ったというので、その論文の付録を解読して比を計算すると確かに 27/32 になっていた。というもの。短い論文ではじめて4ページ以下だったから、Brian と冗談で PRL に出してみたら通ってしまったという笑い話。グラフ理論でも 27/32 という比は重要だ、というコメントをメールで頂いたりした。

[0906.0359] Webs of five-branes and N=2 superconformal field theories
with Francesco Benini, Sergio Benvenuti.

Davide の TN 理論やその仲間を NS5 と D5-ブレーンの結合系で実現する、という話を Francesco と Sergio がやっていたら、いくつかの例で En 対称性がでるらしいと判っていたそうで、4次元の場の理論的に導出出来ないかと聞かれてそこを調べた。というわけで僕の寄与は基本的には場の理論的解析の一節と、暇だったときに E8 用のブレーン網の図を書いただけ。投稿してから、途中の節で新しいことを見つけたつもりで書いた事実が、第二次革命華やかなりし頃に出た論文に既に書いてあったと指摘を受けた。当時はあまりに論文が多くて何が既に知られているか把握するのはなかなか難しいと判った。

[0905.4074] Six-dimensional DN theory and four-dimensional SO-USp quivers

Davide の N=2 duality の論文をさて真面目に読むかと思って、論文を読むのに一番良い方法はすこし違う系で実際に手を動かしてみることだから、ゲージ群を SO/USp に変えてやってみることにした。(物性のほうでは銅鉄主義というのがあるが、素粒子理論では SU/SO主義ということになる。)しばらく頑張ってみると SO 特有の微妙な点がいくつかあるもののほぼ同様に出来てしばらくした頃、昼食時に Nati が何を最近やっているのかと問うので、Davide のやった話を SO でやってみたが別に大した話ではないから書かずに置いてありますというと、それはいけない、たとえどんなつまらない話と思っても論文は書いておかないといけない、という返答。なんだか良くわからないうちに、Yuji がこれを論文に書き上げるべきかこのテーブルの多数決で決めよう、ということになって、僕以外みな挙手したので書くことにした、という論文。

[0903.5184] Comments on Galilean conformal field theories and their geometric realization
with Dario Martelli.

すこし前に非相対論的共形対称性のある重力解をつくったが、Schrödinger 対称性と Lifshitz 対称性との違いが良く判らなかったので、そもそも非相対論的共形対称性にはどんなものがあるのか調べたくなって Dario と一緒にしばらく頑張った結果がこれ。相対論的でないと、いろいろ不思議な対称性の群があるのだが、生憎それらを実現するまっとうな系はなかなかないそうで、重力解もうまくは作れなかった。しかしこういう代数の研究を長年やっている専門家もいるのだということが判った。これを機会に Wigner-Inonu contraction の Inonu さんが何者かというのを調べてみたら、トルコ人で大統領の息子で、正しくは İnönü と綴って大文字の I の上にも点があることが判ったことも収穫だった。

[0903.4176] Higher-Derivative Corrections to the Asymptotic Virasoro Symmetry of 4d Extremal Black Holes
with Tatsuo Azeyanagi, Geoffrey Compère, Noriaki Ogawa, Seiji Terashima.

'09年の年始に日本に帰って基研に寄った際に、最近 Harvard あたりで流行っている Kerr/CFT について寺嶋さん小川君畔柳君にいろいろと教えてもらったので、折角だから何か一緒にしようということで、僕の趣味の高階微分項による補正を入れた場合もきちんと成立するかというのを調べはじめた。アメリカに帰っても細々と続けていたのだが、なにぶん非常に大変な計算で、一箇所どうしてもうまくいかないところがあったから、同時期に西岡君村田君と共同研究をしていた Geoffrey が重力の保存量の世界一の専門家(の一番弟子)であったので、彼らに紹介してもらって計算を手伝ってもらった、という話。まあ頑張って計算するときちんとうまくいくのであるが、大変な計算だった。

[0810.4541] Argyres-Seiberg duality and the Higgs branch
with Davide Gaiotto, Andrew Neitzke.

Argyres-Seiberg 双対性の確認はそれまで Coulomb branch 側でばかり為されていたので、Higgs branch 側でもやってみようと思ってとりあえず次元を確認してみるとうまく行っていることが判った。それ以上の確認をするには E6 の1-インスタントンのモジュライ空間の正則関数の環が要るので、昼食時にその話題を Davide に振ってみると、彼がすこし離れたところに座っていた Witten 先生に「1-インスタントンモジュライって極小冪零軌道と同じでしたっけ」と聞く。答えは Yes で、Davide が「それなら正則関数の環は Andy が知っているはず」というので、食後に Andy の部屋に押し掛けて説明すると、なんでもそれは Joseph イデアルというもので与えられるそうだった。あとは文献を探し当てて、解読して、ややこしい計算を一週間ほど Andy と僕とで続けると、二つのハイパーケーラー商が見事に一致することが判った。

[0809.3238] A counterexample to the a-'theorem';
with Alfred D. Shapere.

Argyres-Douglas 型の N=2 超共形場理論の central charge の計算が前の論文で出来るようになったので、SU(N) で Nf だけフレーバーがある場合を江口=堀=伊藤=梁がやっていたのに適用してみたら、 思いがけず central charge "a" が低エネルギーで増加している例をみつけた。いろいろ Al と議論して、二人で間違いがないか探し、専門家の前でも説明しておかしなところは無いか聞いてもらうのに数ヶ月費やして、どうやら仕方がないらしいということで論文にした。論文を書いても皆さん誰も信じてくれず、信じてくれない人には議論のどこがおかしいか指摘してくれと頼むも返答もなく数年が経ったのだが、結局 Nati と Davide の論文で、そもそも低エネルギーが一つの超形場理論だという仮定が間違っていたことが判った。そんなことは考えもしなかったし、当時は Davide の N=2 duality の論文の前だから、N=2 超対称理論の結合定数空間の境界で理論がどう分解するか知られていなかったから仕方がないといえば仕方がないのだが、それは言い訳だ。結局 Komargodski-Schwimmer で a 予想は殆ど証明されてしまった。

[0807.1102] Classification of N=6 superconformal theories of ABJM type
with Martin Schnabl.

Bagger-Lambert が出た辺りから Martin が興味を持ったので、N=8 超対称性を持つ 3d Chern-Simons-matter 模型がないものか一緒にずっと探していたのだがうまくいかなかった。その後 ABJM が出たので、では N=6 が出るものは他にあるか、と虱潰しに探した論文。ほぼ論文が書き上がった頃に 細道-李-李-李-朴 が出て、結局 Gaiotto-Witten の N=4 の場合の解析と同様、超 Lie 代数の分類に帰着することが判って、論文に殆ど新規価値がないことになったのだが論文を投稿してしまった。そもそも僕らの分類手法はその昔に超 Lie 代数が分類された方法と基本的に同じだったということが判った。

[0807.1100] Comments on string theory backgrounds with non-relativistic conformal symmetry
with Juan Maldacena, Dario Martelli.

Dam Tanh Son が見つけた計量に興味を持った Dario が、Juan と一緒にきちんと弦理論に埋め込むことを研究しはじめていたところ、Dario がお前も興味があったら一緒に研究するか、と誘ってくれたので参加させてもらった。重力解をいろいろと自分で弄ったことはそれまで無かったので、黒板の前で三人で議論していると Dario や Juan の魔法のような式変形についていけず、毎日議論の終わったあとに机に向かって式を再導出していた記憶がある。結局、10次元IIB超重力から massive ベクトル場をどう出すか、という問題に帰着したので、consistent truncation を探すべく計算をはじめたのだが、Dario が「これだけ場を使えば出来るんじゃないか」というので数日計算してみるとうまくいかない。彼にそう伝えると、「じゃあこの場も足してみると出来るんじゃないか」というので数日計算してみるとそれでも consistent にならない。というのを数回繰り返すと有限回で手続きが終了して、目出度く consistent になった。僕は Dario の炯眼に感服した次第。同じ日に同じことをやった論文が二つ、 Herzog-Rangamani-RossAdams-Balasubramanian-McGreevy とが出た。技術的な内容はどれも同じだが、地の文が僕らのは非常に悲観的なのに対して ABM は非常に楽観的で対照的だった。付録のひとつでの超対称性の計算を僕がしたところが間違っていて、あとで訂正したのは苦い記憶だ。

[0804.1957] Central charges of N=2 superconformal field theories in four dimensions
with Alfred D. Shapere.

Ofer との論文で、Argyres-Douglas 型超共形理論の中心電荷がいくつかの例で重力双対を使って計算できたが、丁度研究所に滞在中の Al と、純粋に場の理論的に計算する方法を考え始めた。中心電荷 a と c の線形結合のひとつが、ループを回る演算子に関する足し上げの形をしていたので、それが正当化できないかしばらく考えたがうまくいかない。ある寒い日に、院生だった頃に江口先生が「Moore-Witten に書いてある A、B因子が中心電荷と関係ある筈だ」と言っていたのを思い出したので、いろいろやってみると、a と c が A と B の R 電荷の線形結合で書けるらしいことが判った。判ってしまえばそれを正統化するのはそれほど難しくなかった。この論文の内容は江口先生の還暦記念研究会で話をする機会を貰えて光栄だった。

[0711.4532] A holographic computation of the central charges of d=4, N=2 SCFTs
with Ofer Aharony.

Argyres-Seiberg が出て非常に感動したので、何かできないかと考えていたところ、フレーバー対称性の中心電荷なら計算できることが判った。それをイスラエル出張帰りの Nati にすると、丁度あちらで Ofer が同じ計算をした話を聞いたというので、連絡をとって一緒に研究することにした。しばらくすると共形変換の中心電荷も目出度く計算できたので論文になった。Holography の計算で D3-brane の数を 1 にするのはかなり無茶ではあったが。 harvmac を使ったのは初めてだった。後に、フレーバー対称性の中心電荷は '97 に Cheung-Ganor-Krogh がやっていたことが判った。

[0709.0348] A-D-E Quivers and Baryonic Operators
with Futoshi Yagi.

普通弦理論の文献では非可換群によるオービフォールドは滅多に調べられていないので、AdS/CFT の文脈でやったらどうなるかと思って、T1,1 を SU(2) の離散部分群で割ったときの D3-brane が巻いた状態がいくつでるかを調べた。結局 ADE 箙の半不変量 (semi-invariants) を調べると、球面を正多面体群で割ったときの面の出具合が反映されているということになる。八木君とで愚直にしらべていたのだが、出版したあとで基研に寄った際に数学の木村君に聞いてみると、Skowroński-Weymanという論文が2000年に出ていたことを教えてもらった。この論文は弦理論の論文としては内容は悪くないと思うが、生憎誰にも引用してもらえていない。

[0706.2114] Rigid Limit in N=2 Supergravity and Weak-Gravity Conjecture
with Tohru Eguchi.

Arkani-Hamed et al. が「弱重力予想」というのを出した。これは、矛盾の無い量子重力理論では重力は他の力より弱くなければならない、というもので、他の定式化としては、プランク質量にゲージ結合定数をかけたあたりのところに必ず何か粒子があるはず、ということも出来る。これを弦理論の N=2 超対称性をもつコンパクト化のばあいに確かめた。まあこの場合は何らかの duality frame に行けばそこでの弦理論のスケールが丁度プランク質量に弦の結合定数を掛けたものになるので、当たり前といえば当たり前である。おまけとして、Matone 関係式とよばれる重力の関係ない N=2 超対称ゲージ理論の関係式が、コンパクトな Calabi-Yau に埋め込むことで導出できることが判った。

[0704.1819] Comments on Charges and Near-Horizon Data of Black Rings
with Kentaro Hanaki, Keisuke Ohashi.

高階微分補正をいれたブラックリングのエントロピーを計算して、弦理論と比較しようと思ったのだが、漸近平坦な解をつくるのは困難なので、地平面近傍の解だけで議論をしたい。しかし、5次元重力理論で Chern-Simons 項があるので、地平面での電荷と無限遠での電荷を比較する必要があったのでそこを解決した論文。弦理論における電荷と比較する際、地平面近傍の電荷を使うべきか、無限遠での電荷を使うべきかどちらが正しいかという論争がそれまで二グループ間であったのだが、僕らの結論は、両者は大ゲージ変換で繋がっているのでどちらでもよい、というもの。

[hep-th/0611329] Supersymmetric Completion of an R2 Term in Five-Dimensional Supergravity
with Kentaro Hanaki, Keisuke Ohashi.

以前書いた「a 最大化の重力双対」で、一般の場合が5次元超重力の高次項が知られていないために出来なかったのが悔しかったので、その道の第一人者(の一番弟子)の大橋さんと、元気な花木君に如何にこの問題が重要か説得して、大変な計算をやってもらったという論文。とんでもない計算量で、はじめたころは皆東京にいたのに、終わったら僕はアメリカ、大橋さんはイギリス、と離れ離れになっていた。この論文はいろんなひとに結果を使ってもらった。

[hep-th/0611141] Black Hole Entropy in the presence of Chern-Simons Terms

アメリカに移動するのでちょっと今までやらなかったことをやってみようと、丁度 Aspen のブラックホール研究会に参加していたこともあって、何かブラックホールの勉強をしてみようと思った。エントロピーの計算をしてみるにあたって、Chern-Simons 項がある場合の公式が知られていないということを知ったので、単に Wald の一般論をすこしだけ拡張して適用してみた、というもの。Wald の定式化の勉強ができて丁度良かった。

[hep-th/0601054] Triangle Anomalies from Einstein Manifolds
with Sergio Benvenuti, Leopoldo A. Pando Zayas.

Yp,q多様体の体積と、a 最大化の結果が見事にあうという進展があったので、a 最大化する以前のアノマリの段階で重力側と場の理論側が合うことを示そうと頑張ったもの。サンタバーバラで Sergio と Leopoldo とで頑張って計算した。超重力の次元還元でアノマリを内部空間の幾何学で書くのが IIB の五形式場が作用がないせいでまず一苦労で、得られた幾何学的公式をトーリック佐々木=Einstein の場合に計算することもかなり大変だった。後者は数日進展が無かったので買った Keith Jarret の独奏のアルバムを下宿の部屋で聴いていたときに方針が立って可能になった。書き上げるのは日本に戻ってからになった。

[hep-th/0512061] The Gauge/Gravity Theory of Blown up Four Cycles
with Sergio Benvenuti, Manavendra Mahato, Leopoldo A. Pando Zayas.

Klebanov-Strassler 解は重力解先端の 2-cycle を膨らませたようなものだが、4-cycle がある場合にそれを膨らませるとどうなるかということを調べた。これは残り三人がやってほぼ出来ていたところに混ぜてもらって、一般のトーリック佐々木=Einstein の場合にどうなるか、という部分の話だけ書いてあまり他の部分を理解していなかったのだが、数年たって Dario と Juan と論文を書いた際に、理解していなかった部分の拡張をやることになった。世の中巡り合わせだ。

[hep-th/0512019] More anomaly-free models of six-dimensional gauged supergravity
with Ryo Suzuki.

Avramis,Kehagias,Randjbar-Daemi という論文で、六次元のアノマリ無し超重力の新しいものが見つかったというのに感激したので、鈴木君を誘ってパソコンをぶん回して他の例を探し始めた。生憎例外群を使った場合は Avramis-Kehagias が数ヶ月後にやってしまったので、まあ例外群をつかわなくても良かろうと小さい群をつかったのが我々の論文。しかし、本文よりも付録 B でやった、symplectic-Majorana gravitino の重力アノマリ係数の決定のほうが意味があるはず。e2π i/6 の平方根であるのはすぐわかるが、e2π i/12 か e2π i7/12 かどちらかを決定するという微妙な話だった。

[hep-th/0510061] Distribution of Flux Vacua around Singular Points in Calabi-Yau Moduli Space
with Tohru Eguchi.

Ashok-Douglas の真空数え上げを、モジュライ空間のいろいろな特異点のまわりで調べた。半年以上やっていたのだが、夏のトロントの会議で Douglas が当時学生の Gonzalo Torroba と似た話論文を書いていると言ったので、サンタバーバラについてからあわてて先生と詳細をつめて論文にした。非常に泥臭い解析をしたのだが、数ヶ月後に Douglas-Lu によって簡潔な証明が出た。

[hep-th/0509230] Pouliot Type Duality via a-Maximization
with Teruhiko Kawano, Yutaka Ookouchi, Futoshi Yagi.

本郷にいらっしゃった大河内さんが a 最大化のプロなので何かやってみようということで、川野さんが以前なさっていた Pouliot 型双対性 (カイラルな超対称場の理論が非カイラルな理論と双対になるというもの) に適用してみることにした。案外計算が大変で、八木君には迷惑をかけた。

[hep-th/0507057] Five-dimensional Supergravity Dual of a-Maximization

本郷にポスドクでいらっしゃった大河内さんが a 最大化のプロなので、影響されて何かやってみようと思い、重力側でどう見えるか考えてみたのがこの論文。基本的に5次元の超対称重力理論の構造を理解するのが問題で、それが出来ればあとは自然に両側が合致することが判った。丁度トロントの会議に出張する前だったから、先延ばしにするかそれまでに書いてしまうか悩ましいところだったが、気合いをいれて投稿してからカナダに行った所、丁度よく似たことをやった論文が出た。

[hep-th/0503033] Global Structure of Moduli Space for BPS Walls
with Minoru Eto, Youichi Isozumi, Muneto Nitta, Keisuke Ohashi, Kazutoshi Ohta, Norisuke Sakai.

これは2004年秋の学会での東工大セッションで、彼らのやっていることに至極感銘を受けたので、共同研究に混ぜてもらって論文を書いたのだったと思う。大岡山と本郷は地下鉄南北線で直通だから案外共同研究はやりやすいことが判った。

[hep-th/0401184] Five-dimensional Chern-Simons terms and Nekrasov's instanton counting

修論を書くので Nekrasov のインスタントン分配関数の話を勉強したので、すこしだけ拡張したのを論文にした。N=2 超対称 SU(N) ゲージ理論を出すカラビ=ヤウ多様体は何種類もあるのが全て4次元極限をとるとおなじ分配関数になるのだけれど、その極限をとる前だと5次元での SU(N) のチャーンサイモンズ項が違うので、それの寄与から区別ができる、という話。

[hep-th/0311191] Supergravity Analysis of Hybrid Inflation Model from D3--D7 System
with Fumikazu Koyama, Taizan Watari.

渡利=柳田で N=2 超対称理論に平らなモジュライがあるのを使えばインフラトンの平坦性が説明出来る、という話があったので、それに N=2 超重力の効果をいれたらどうなるかというのを調べるのに参加させてもらった。基本的には IIB を K3 x T2 上で考えた際、T2 に並進対称性があるから、それが平坦性を保つ、というシナリオなのだが、実際は flux を入れたりするせいでうまくはいかない。N=2 超重力の構造から決まるポテンシャルが、10次元のいろいろな場が D3-ブレーンに及ぼす力をきちんと再現するのを確認できたのは面白かった。

[hep-th/0211274] Derivation of the linearity principle of Intriligator-Leigh-Seiberg

Dijkgraaf-Vafa で、4次元超対称理論が行列模型に帰着出来るという話だったので、4次元超対称理論の種々の性質が行列模型ではどう見えるかというのを調べてみたひとつ。

[hep-th/0211189] Derivation of the Konishi anomaly relation from Dijkgraaf-Vafa with (Bi-)fundamental matters

同上。Dijkgraaf-Vafa 関連では初期に論文を書いたので、大したことはない論文なのに沢山引用してもらった。